旅・いろいろ地球人
アメリカ大陸の物作り
- (8)作家として母として 2012年3月1日刊行
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伊藤敦規(国立民族学博物館助教)
家族への贈り物作りに笑顔が絶えないオラさん米国には約550の先住民族集団が暮らしていて、総人口は200万人ほどである。南西部に位置するニューメキシコ州内に大阪府とほぼ同じ面積の保留 地をもつズニの人口は約1万1000人で、宝飾品や土器や石彫に希有(けう)な才能を発揮するアーティストが多いことで知られている。
オラ・エリアッチョさんはサンゴやトルコ石を用いたズニの伝統的な象眼銀細工を40年ほど生み出し続けてきたベテランで、2004年に開館したワシ ントンDCの国立アメリカ・インディアン博物館で1週間にわたる個展を開いたこともある。この業界では名の知れた作り手である。
とはいえ、彼女の日常は作品制作だけに費やされているわけではない。オラさんは有名アーティストであると同時に、妻であり、5人の子どもの母であ り、4人の孫の祖母でもある。その日常は同居する家族やしばしば家を訪れる親族のためにささげられているといっても過言ではない。
米国のものづくりと聞くと、オートメーション化された自動車工場や、一括管理下のアグリビジネスといった、規格化と非日常的な大規模産業を想起しがちである。しかしながら、料理や裁縫といった家族のための幸せづくりもまた、この国の特徴である。
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