国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

旅・いろいろ地球人

ずらりと並べる

(3)レストランでの流儀  2012年5月24日刊行
横山廣子(国立民族学博物館准教授)

店先に素材を並べたレストラン 雲南省大理市で、張建宇さん撮影

外食先を物色する際、客の多さを最も熱心に観察するのは、私の経験では中国人である。私がよく行く雲南省では、庶民的なレストランでの食事の際、もう一つの流儀がある。着席後、お客のうち1人か2人が、たいてい料理の素材が並べてある場所まで行き、野菜や肉、魚などの顔をじっくり眺めながら、注文をするのである。

その場所は調理場に近い、店の奥にあることが多い。ガラス戸のついた数段の棚に美しく並べているのは、使う側の便利もあるだろうが、お客に見てもらうことを意識してもいるのだろう。

客は素材の鮮度をひとつひとつ見極め、横で待つ店員に、素材の組み合わせや調理法を指示していく。ちょっと考えていると、店員が何かを勧めてくる。しかし、素材を自分の目で確認するまで簡単には誘いに乗らない。店員との攻防戦は、なかなか楽しい。繁盛している店は、使う大きさに切った素材も準備している。鮮度は特に注意するが、具体的な料理のイメージに直結し、注文がしやすい。

外食でも数品の料理をみんなで一緒に囲む習慣、食への飽くなき関心、素材が豊かな風土が生んだ流儀なのだろう。狭い店では素材を店先にずらりと並べていて、お店選びの参考にもなる。

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