国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

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たちこめる

(6)暑さ対策にはタナカー  2013年4月11日刊行
園田直子(国立民族学博物館教授)

石盤でタナカーをすりおろす女性=ミャンマーで、筆者撮影

ミャンマーの季節は、雨期、乾期、暑期に分かれる。最も快適な季節といわれる乾季も終わる2月、初めてこの地を訪れた。それでも日中の気温は39度前後、外には東南アジア特有の、食べものと花のにおいが混じりあった、どこか懐かしい、温かい空気がたちこめている。

町を歩く女性や子どもたちの顔に、うすい黄土色の粉のようなものが塗られているのに気づく。タナカーと呼ばれる植物由来の粉で、日焼け防止の効果があるという。つけると清涼感があり、たちこめる暑さ対策にはもってこいの天然のおしろいである。おしゃれな女性たちはタナカーを下塗りしてから、パウダーで仕上げている。

ミャンマー中央部にある遺跡と僧院の町、ザガインはタナカーの産地で知られる。おわんを伏せたような形の仏塔が特徴的なカウンムードー・パゴダの周辺にはタナカーの枝と石盤を売る店が並んでいる。境内にも大きな石盤がある。お参りの人びとが、この枝を、石盤の上で少量の水とすりおろしては顔に塗っていた。

スーパーでは、プラスチックの容器に入ったペースト状のタナカーが売られていた。伝統的な使い方だけでなく、タナカーも変化しているようである。

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