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世界をめぐる楽器
- (3)棒ツィター 2019年4月20日刊行
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福岡正太(国立民族学博物館准教授)
棒ツィター(カニ)の伴奏で歌うラオスの少数民族オイの女性(手前左)=ラオス・アタプーで2013年、筆者撮影
インドネシア・ジャワ島中部の仏教遺跡ボロブドゥールのレリーフには、さまざまな楽器が描かれている。研究者が棒ツィターと呼びならわす楽器もその一つだ。棒状の胴に1本の弦を張った楽器で、半分に割ったヒョウタンなどを共鳴器として取り付け、それを演奏者の体に押し付けたり離したりすることで音に変化をつける。
ボロブドゥールは、インド文明の影響の下、8~9世紀にかけて建立された。そこに描かれた楽器もインドからもたらされたものと考えられている。インドでは、棒ツィターはビーンあるいはルドラ・ヴィーナーとよばれる楽器に発展していった。それは、より大型で複雑な弦楽器で、北インド古典音楽に用いられる。中空の筒状の胴(指板)に4本の旋律弦と3本の共鳴弦を張り、胴の両端にヒョウタンの共鳴器がつけられている。琴の仲間に分類される楽器だ。
残念ながら、現在のジャワ島では棒ツィターをみることはできないが、東南アジアの大陸部では今でも棒ツィターが奏でられている。タイのピン・ナムタオやカンボジアのセ・ディウとよばれる楽器である。これらの楽器の歴史ははっきりとはわからないが、インドから東南アジアにもたらされ、1000年を超えて演奏されてきたと想像される。
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