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たちこめる
- (8)囲炉裏の善しあし 2013年4月25日刊行
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飯田卓(国立民族学博物館准教授)
天井一面のトウモロコシ=マダガスカルで、川瀬慈(国立民族学博物館助教)撮影かやぶき民家が多くみられる京都府南丹市美山町で、知人の家におじゃました。外観はかやぶきながら、建具は近代的なものを使い、室温は快適である。炉端でごちそうにあずかりながら、昔は囲炉裏(いろり)で暖をとったのだなと思いをはせた。
私の調査するマダガスカルでも、屋内に囲炉裏を切る家屋がある。雨が多い地域では、調理場を別棟にすると不便だからか、寝室と囲炉裏が隣り合わせである。特に、標高が高くて寒い地域では、囲炉裏の煙を逃がさない木造家屋が多い。
囲炉裏の上には、まきを置いて乾かす火棚があり、天井には一面にトウモロコシがぶら下がっている。こうしておけば、ネズミの食害を受けないし、煙にいぶされて長期保存にも耐える。たいへん合理的だ。ただ困ったことに、1カ月の調査の間、朝夕ごとに煙でいぶされた荷物は、日本にもち帰ってもなかなかにおいがとれなかった。このことは、近代化した美山町の民家でもやむをえないそうだ。
国立民族学博物館の特別展「マダガスカル 霧の森のくらし」(6月11日まで)では、こうした木造家屋の実物が展示されている。大英博物館が1980年代に集めた資料で、今回は四半世紀ぶりの一般公開である。
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