旅・いろいろ地球人
宗教とアルコール
- (6)オッサンの甘く白い酒 2010年3月10日刊行
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笹原亮二(研究戦略センター教授)
神役の衣装に供えられたミキ関西に居を移して違和感を覚えた一つが酎ハイだった。関東で酎ハイといえば、単に焼酎を炭酸で割った透明な酒にレモンのスライスが浮かんでいるものをさすが、関西では白・黄・緑など、さまざまな色がついた炭酸割りの酒となる。しかも甘い。オッサンが焼き鳥屋や居酒屋で色のついた甘い酒を飲む姿は、私には想定外であり、驚きだった。
甘く白い酒で思い出すのは、以前訪れた沖縄の先島地方のある祭りである。そこでは泡盛の乳酸飲料割りが祭壇に供えられ、オッサンたちもそれをガンガン酌み交わしていた。関西の酎ハイにも用いられる乳酸飲料の原液で割った酒は、とにかく甘い。なぜ泡盛をわざわざこんなふうにして飲むのか、私は不思議でならなかった。
先日奄美大島の祭りで、米を発酵させて作った白い飲料「ミキ」が供えてあるのに出くわした。先島地方の祭りの白く甘い酒も、もともとこれだったとすると、なるほど合点がいく。ちなみに奄美では、ミキは祭りや儀礼に供えられるにとどまらず、商店でも普通に売られている人びとにおなじみの飲み物である。しかし、奄美のミキを関西に当てはめるにはやや無理がある。それでは、関西の甘く白い酒には一体どんなわけがあるのか。私の違和感は、いまだぬぐえていない。シリーズの他のコラムを読む