多元的共生空間の創成に関する研究
研究期間:2004.4-2008.3 / 研究領域:社会と文化の多元性
代表者 横山廣子(民族社会研究部)
研究の目的
いかにして多元的共生空間を創成しうるか、人類学を中心に隣接諸学科を含めて研究することが目的である。今日の社会の新たな課題は、生産性と効率を重視する従来の価値観のみの追求ではなく、一定の経済発展を維持しつつ、さまざまな個性が共に幸せに生きる多元的共生社会(英文ではイヴァン・イリイチの用語から"convivial society"とする)を育てていくことと考えられる。それは個人にとっては各人が他者との関係の中でその可能性を十分に発揮し、自己実現を通して充足感を持てるような社会であり、社会の側に立てば、多様な特徴を持つ人々の異質な能力を導き出し、矛盾や対立を調整して彼らが共に生きることを可能にする市民社会である。
この多元的市民社会の形成につながる多元的共生空間が本研究の研究対象である。それは具体的にはボランティア組織などの集団、公共的建築物、日常的な生活の場、人々のネットワークなど多彩に考えられる。多元的共生空間の創成の条件やそれを阻む障害とその克服を具体的事例に即し、理念や価値観あるいはものの考え方、社会的なしくみや制度、あるいは経済性や技術までをも含めて多面的に研究することにより、多元的共生空間の創成に寄与することを目指す。
この多元的市民社会の形成につながる多元的共生空間が本研究の研究対象である。それは具体的にはボランティア組織などの集団、公共的建築物、日常的な生活の場、人々のネットワークなど多彩に考えられる。多元的共生空間の創成の条件やそれを阻む障害とその克服を具体的事例に即し、理念や価値観あるいはものの考え方、社会的なしくみや制度、あるいは経済性や技術までをも含めて多面的に研究することにより、多元的共生空間の創成に寄与することを目指す。
研究の内容
本研究には大きく二つの方向性が考えられる。一つは、多元的共生が成立しえていない空間の問題に重点を置き、そこに埋没してしまっている人々には見えていない共生しえていない実態とその仕組みとを明らかにするものである。その場合、国家、市民社会あるいはコミュニティの問題にも議論が及ぶであろう。二番目は、多元的共生が実現されているかあるいはそれを目指している空間に焦点を当て、どのようにして実現に至るかを研究するものである。この場合、そこでの実践者との交流が重要になり、実践者と密接な連携をとりながらの調査研究が必要であり、場合によっては研究者の実践へ参与を通しての研究も考えられる。
本研究につながる従来の研究としては、共同研究「時間的枠組みと多元的共生社会に関する研究」(平成13~15年度)がある。そこから浮かび上がった、選択肢の増大、人と人との関係の結び方とその調整の重視、という多元的共生の要点とともに、「ユニヴァーサル」という視点に留意して研究を進める。また、異文化間を比較する視点や一つの社会を全体的に捉えるといった人類学の特徴を活かした研究を志す。
本研究につながる従来の研究としては、共同研究「時間的枠組みと多元的共生社会に関する研究」(平成13~15年度)がある。そこから浮かび上がった、選択肢の増大、人と人との関係の結び方とその調整の重視、という多元的共生の要点とともに、「ユニヴァーサル」という視点に留意して研究を進める。また、異文化間を比較する視点や一つの社会を全体的に捉えるといった人類学の特徴を活かした研究を志す。
研究成果の概要
本研究の特色は、多元性をたとえば民族や文化に限定せず、参加者が個別の角度からのアプローチで研究するとともに、全体としてさまざまな意味での多元性を研究する点であった。多元的共生空間の創成を考える研究にとって、それが有効という判断に基づいていた。
平成17年度から19年度まで毎年度開催したダンス・ワークショップとそれにかかわる研究は、年齢、性別、障がいの有無、経験の違いなど多様な人々がともに民博の展示からダンスを創作するプロセスに関する研究である。そこには、展示されている文化の側の人々と創作する側の人々との関係という別の次元での多元性の問題も包含されている。これを通して、総合的視野からの多元的共生空間創成の可能性に関する認識や理解、今後の課題が明らかになった。また、ワークショップの実施自体やそれを記録した映像作品は、成果の社会的還元という点でも一定の効果を上げた。
上記の研究とも接点を持ちながら、ユニバーサル化に関わる研究も進められた。平成18年度に開催された「ユニバーサル・ミュージアムを考える~"つくる"努力と"ひらく"情熱を求めて~」の成果として、廣瀬浩二郎編著『だれもが楽しめるユニバーサル・ミュージアム-"つくる"と"ひらく"の現場から』(2007年読書工房)が刊行され、博物館のユニバーサル化に向けた具体的方法が示された。
民族や文化の多元性に関わる研究として、平成17年度に日本のアイヌと中国の小規模民族集団の現状を相互に理解し、議論するワークショップならびにフォーラムが開催され、行政措置などと並んで教育の問題の重要性が認識された。それをふまえて平成18年度に公開フォーラム「日本における多文化教育-アイヌ文化の場合-」を開催し、日本における多民族・多文化の教育の現状と問題点を明らかにした。
このほか個別研究テーマとしては、地域の市民活動組織や共生的集住・集合空間、多感覚活用装置と共生などの研究が進められた。
平成17年度から19年度まで毎年度開催したダンス・ワークショップとそれにかかわる研究は、年齢、性別、障がいの有無、経験の違いなど多様な人々がともに民博の展示からダンスを創作するプロセスに関する研究である。そこには、展示されている文化の側の人々と創作する側の人々との関係という別の次元での多元性の問題も包含されている。これを通して、総合的視野からの多元的共生空間創成の可能性に関する認識や理解、今後の課題が明らかになった。また、ワークショップの実施自体やそれを記録した映像作品は、成果の社会的還元という点でも一定の効果を上げた。
上記の研究とも接点を持ちながら、ユニバーサル化に関わる研究も進められた。平成18年度に開催された「ユニバーサル・ミュージアムを考える~"つくる"努力と"ひらく"情熱を求めて~」の成果として、廣瀬浩二郎編著『だれもが楽しめるユニバーサル・ミュージアム-"つくる"と"ひらく"の現場から』(2007年読書工房)が刊行され、博物館のユニバーサル化に向けた具体的方法が示された。
民族や文化の多元性に関わる研究として、平成17年度に日本のアイヌと中国の小規模民族集団の現状を相互に理解し、議論するワークショップならびにフォーラムが開催され、行政措置などと並んで教育の問題の重要性が認識された。それをふまえて平成18年度に公開フォーラム「日本における多文化教育-アイヌ文化の場合-」を開催し、日本における多民族・多文化の教育の現状と問題点を明らかにした。
このほか個別研究テーマとしては、地域の市民活動組織や共生的集住・集合空間、多感覚活用装置と共生などの研究が進められた。
研究成果の公表計画及び今後の展開
ダンス・ワークショップは文資プロジェクト(代表:三尾稔)として継続的に実施していく。また、それに関する研究と成果の刊行については、申請中の共同研究を(代表:西洋子客員教授)を母体としてさらに展開して進めていく予定である。
さらに、現在、上記公開フォーラム「日本における多文化教育-アイヌ文化の場合-」の成果刊行に向けて、編集作業を進めている。
その他の個別研究の成果公表については、検討中である
さらに、現在、上記公開フォーラム「日本における多文化教育-アイヌ文化の場合-」の成果刊行に向けて、編集作業を進めている。
その他の個別研究の成果公表については、検討中である
2007年度成果
研究実施状況
最終年度ということを念頭に、個別研究課題については各自が研究のとりまとめに向けて準備を進めた。昨年度末に今年度の実施を計画していた総括としての国際シンポジウムは、諸状況を勘案し、開催を断念し、個別の研究成果の公開・発信をすることとした。
平成17年度以来、実施してきたダンス・ワークショップついては、機関研究メンバー西洋子東洋英和女学院大学教授が代表をつとめる「みんなのダンスフィールド」が、昨年度の第2回のワークショップで創作したアボリジナルをテーマとするダンスをもとに、さらに学習を深め、内容をバージョンアップしたダンスの創作と発表をおこなった。また、館内207回 研究懇談会(2008年1月23日開催)において三尾稔准教授が「民博ダンス・ワークショップの実践-その可能性と課題-」の報告をし、これまでのワークショップを総括するとともに、ダンス表現を通じた博物館活動の可能性と課題について検討した。参加者全員との討議の中で、今後の展開にむけての問題点やその意義が明らかになった。その後、機関研究の枠組みとしては総まとめの意味を持つ2日間のワークショップを年度末に実施するのに向けて、研究ダンス創作のリーダーやワークショップのコーディネーターが集まり、実施内容の検討と打ち合わせをおこなった。それによって今年度のワークショップの目標、当該時期の展示内容を検討した上でのテーマ、ワークショップ実施の具体的な手順等が定まった。 今年度のワークショップでは、そのプロセスについての聞き取り調査を行い、時間をかけたダンス作成の過程で生じたイメージの深化や、ダンス作りに関わった人々の相互のコミュニケーションのあり方の実態を把握した。2008年3月22、23日に実施されたワークショップ本番においては、昨年同様の世界の地域文化に関わるテーマに基づくダンス作成に加えて、より抽象度の高いテーマやモチーフを用いたダンス表現も試みた。様々なテーマによるダンス制作のプロセスを比較することで、どのようなテーマ設定が参加者の創作意欲を刺激し、また参加者相互のコミュニケーションを促すのかを検証した。
平成18年度末に実施した公開フォーラム「日本における多文化教育-アイヌ文化の場合-」については、刊行に向けて、フォーラムを録音したテープおこし、原稿執筆、編集作業を進めた。
平成17年度以来、実施してきたダンス・ワークショップついては、機関研究メンバー西洋子東洋英和女学院大学教授が代表をつとめる「みんなのダンスフィールド」が、昨年度の第2回のワークショップで創作したアボリジナルをテーマとするダンスをもとに、さらに学習を深め、内容をバージョンアップしたダンスの創作と発表をおこなった。また、館内207回 研究懇談会(2008年1月23日開催)において三尾稔准教授が「民博ダンス・ワークショップの実践-その可能性と課題-」の報告をし、これまでのワークショップを総括するとともに、ダンス表現を通じた博物館活動の可能性と課題について検討した。参加者全員との討議の中で、今後の展開にむけての問題点やその意義が明らかになった。その後、機関研究の枠組みとしては総まとめの意味を持つ2日間のワークショップを年度末に実施するのに向けて、研究ダンス創作のリーダーやワークショップのコーディネーターが集まり、実施内容の検討と打ち合わせをおこなった。それによって今年度のワークショップの目標、当該時期の展示内容を検討した上でのテーマ、ワークショップ実施の具体的な手順等が定まった。 今年度のワークショップでは、そのプロセスについての聞き取り調査を行い、時間をかけたダンス作成の過程で生じたイメージの深化や、ダンス作りに関わった人々の相互のコミュニケーションのあり方の実態を把握した。2008年3月22、23日に実施されたワークショップ本番においては、昨年同様の世界の地域文化に関わるテーマに基づくダンス作成に加えて、より抽象度の高いテーマやモチーフを用いたダンス表現も試みた。様々なテーマによるダンス制作のプロセスを比較することで、どのようなテーマ設定が参加者の創作意欲を刺激し、また参加者相互のコミュニケーションを促すのかを検証した。
平成18年度末に実施した公開フォーラム「日本における多文化教育-アイヌ文化の場合-」については、刊行に向けて、フォーラムを録音したテープおこし、原稿執筆、編集作業を進めた。
研究成果概要
ダンス・ワークショップについては、これまでのワークショップの準備段階からダンス創作・発表までのプロセスの検討をおこない、博物館におけるダンス創作の可能性を展開するために、これまでと異なる性格のテーマの設定をする意味を確認した。また、今後の展開として、関西を拠点とする継続的ワークショップを開催しつつ、多元的共生に結びつくワークショップのあり方をさらに深く検討していく意義も確認された。また、博物館の展示からダンスを創作するという活動において、展示されている文化やその担い手との関係について、今後、検討を重ねていくべき課題が明らかになった。機関研究終了後のさらなる研究の展開のあり方を協議し、博物館事業としてのダンス・ワークショップの継続、研究の領域を広げた共同研究への展開の計画を作成した。
平成18年度末に実施した公開フォーラム「日本における多文化教育-アイヌ文化の場合-」については、編集作業がまだ進行中であり、来年度に刊行することとした。
個別の研究成果については、連動して進められた共同研究「多元的共生空間の創成に関する研究」の欄を参照されたい。
平成18年度末に実施した公開フォーラム「日本における多文化教育-アイヌ文化の場合-」については、編集作業がまだ進行中であり、来年度に刊行することとした。
個別の研究成果については、連動して進められた共同研究「多元的共生空間の創成に関する研究」の欄を参照されたい。
公表実績
・廣瀬浩二郎編著 2007 『だれもが楽しめるユニバーサル・ミュージアム--"つくる"と"ひらく"の現場から』読書工房
・みんなのダンスフィールド(代表:西洋子東洋英和女学院大学教授)「第8回ライブパフォーマンス」公演(2007年9月23日、練馬区立練馬文化センターにて開催)
・開館30周年記念 公開ダンス・ワークショップ「ダンスで出会う・ダンスでつながる パート3」(2008年3月22日、23日に本館において実施)
2006年度成果
研究実施状況
研究メンバーは昨年度に続いて各自のテーマに基づき個別研究を進めた。その中間的成果の公開として三つの事業を実施した。一つは廣瀬浩二郎が中心になって企画・実施した国際シンポジウム「ユニバーサル・ミュージアムを考える~"つくる"努力と"ひらく"情熱を求めて~」(9月)である。開催中の本館企画展「さわる文字、さわる世界-触文化が創りだすユニバーサル・ミュージアム-」とも連動させ、アメリカからの2名の報告者も交えて、ひらかれたミュージアムの可能性について討議した。もう一つは、今年度は三尾稔が中心となって運営し、昨年に引き続いて開催した公開ダンス・ワークショップ「ダンスで出会う・ダンスでつながる パート2」である(12月)。 そのための研究会ならびに準備の打ち合わせを平成18年7月以降、数回に分けておこなった。さらに、昨年度、異なる民族や文化の共生空間を議論する目的で特に中国の小規模民族集団と日本のアイヌ民族に焦点を当てて開催したワークショップならびにフォーラムからの発展として、公開フォーラム「日本における多文化教育-アイヌ文化の場合-」(3月)を横山廣子が企画し、本館のアイヌ研究を中心的に担う佐々木利和とともに実施した。
研究成果概要
9月の公開シンポジウムでは、第一に、バリアフリーの観点から、視覚障害者へのサービスを中心に障害者が来館しやすい環境作りについて、これまでの発展の歴史を整理するとともに、具体的な工夫や技術的視点を含めた意見交換がなされた。第二に、視角のみならず五感すべてに訴える展示の手法や新しいワークショップのあり方が討議され、博物館の新たな展開への展望が開けた。
12月のダンス・ワークショップでは、昨年の成果を踏まえ、創作ダンスへとつなげる展示のテーマをより絞り込み、展示の見せ方、解説のあり方についての研究を進めた結果、ワークショップ参加者の展示に対する理解と想像力が促進され、創作活動にプラスに働くという成果が確認できた。また、ダンス創作のプロセスを経ることによって、単に展示を見学する以上の展示への理解がもたらされる可能性が認められた。
3月の公開フォーラムは、共生が確保されにくい状況を変化させうる鍵としての学校教育を念頭に、アイヌの人々や文化に関する学校現場などでの教育実践の報告とそれに基づく討議がおこなわれた。多数の一般参加者も積極的に議論に参加し、教育の実態、実施する教師らの意識と工夫について具体的な理解を深めた。自然との結びつきや伝統的文化が部分的に教えられている反面、現代に生きるアイヌの姿や過去の歴史の正しい理解が教育を通して十分に実現されていないなどの問題点を明らかにすることができた。
12月のダンス・ワークショップでは、昨年の成果を踏まえ、創作ダンスへとつなげる展示のテーマをより絞り込み、展示の見せ方、解説のあり方についての研究を進めた結果、ワークショップ参加者の展示に対する理解と想像力が促進され、創作活動にプラスに働くという成果が確認できた。また、ダンス創作のプロセスを経ることによって、単に展示を見学する以上の展示への理解がもたらされる可能性が認められた。
3月の公開フォーラムは、共生が確保されにくい状況を変化させうる鍵としての学校教育を念頭に、アイヌの人々や文化に関する学校現場などでの教育実践の報告とそれに基づく討議がおこなわれた。多数の一般参加者も積極的に議論に参加し、教育の実態、実施する教師らの意識と工夫について具体的な理解を深めた。自然との結びつきや伝統的文化が部分的に教えられている反面、現代に生きるアイヌの姿や過去の歴史の正しい理解が教育を通して十分に実現されていないなどの問題点を明らかにすることができた。
公表実績
・国際シンポジウム「ユニバーサル・ミュージアムを考える~"つくる"努力と"ひらく"情熱を求めて~」(平成18年9月23, 24日に本館において開催)
・公開ワークショップ「ダンスで出会う・ダンスでつながる パート2」(平成18年12月9,10日本館において開催)
・公開フォーラム「日本における多文化教育-アイヌ文化の場合-」(平成19年3月26,27日本館において開催)
2005年度成果
研究実施状況
研究メンバーは各自のテーマに基づき個別研究を進めた。その中間的成果の公開として二つの事業を実施した。一つは、障害の有無にかかわらずユニヴァーサルな共生空間の創成に向けて開催した公開シンポジウム「共生の現場から2005~フィールドワークで探るユニヴァーサル社会の未来」ならびに公開ワークショップ「ダンスで出会う・ダンスでつながる」である(平成17年11月12,13日に本館において開催)。そのための研究会ならびに準備の打ち合わせを平成17年5月以降、数回に分けておこなった。もう一つの事業は、異なる民族や文化の共生空間の創成を議論するために、国内の研究者・実践者に加え、中国から3名の研究者を招聘して実施した公開国際研究ワークショップ「小規模民族集団の文化とアイデンティティ-地域の営みと国家行政-」(北海道平取町立二風谷アイヌ文化博物館において平成18年3月21日開催)ならびに公開国際研究フォーラム「小規模民族集団の現状と課題-東アジアにおける多様な文化の共生-」(本館において3月24,25日開催)である。
研究成果概要
11月のシンポジウムは研究成果の公開を目的とすると同時に、さらなる研究の深化のための議論を重ねる意味合いも有した。そこではユニヴァーサル化を多元的共生に対立するものと捉える意見も出て、今後、研究メンバーの個別の事例において、その論点を追求する必要性が確認できた。このシンポジウムは同時開催したワークショップと連動していたが、ワークショップには関東ならびに関西から100名近くが踊り手やサポーターとして参与した。民博の展示から個々人が得たイマジネーションをもとに共に踊るダンスを創作するというプロセスは、多元的共生空間の創成を考える上での種々の示唆を与えた。またワークショップは博物館空間の新しい展開という意味合いももつこととなった。創作されたダンスの公開パフォーマンスを通して、その場にいた参加者・一般来館者には多元的共生空間の可能性に関する認識や理解が、ある程度、具体性を持って示された。
3月の公開ワークショップ、フォーラムは、これまでにあまり類例のない、人類学の立場から日本のアイヌと中国の小規模民族集団の現状を相互に理解し、議論する場となり、参加した研究者には多くの研究上の知見と刺激を与えた。またホームページ情報を通じて参集した約20名の一般参加者に対しても新しい認識や理解を開くものとなった。
3月の公開ワークショップ、フォーラムは、これまでにあまり類例のない、人類学の立場から日本のアイヌと中国の小規模民族集団の現状を相互に理解し、議論する場となり、参加した研究者には多くの研究上の知見と刺激を与えた。またホームページ情報を通じて参集した約20名の一般参加者に対しても新しい認識や理解を開くものとなった。
公表実績
・公開シンポジウム「共生の現場から2005~フィールドワークで探るユニヴァーサル社会の未来」(本館において平成17年11月13日)
・公開ワークショップ「ダンスで出会う・ダンスでつながる」(本館において平成17年11月12~13日)
・公開国際研究ワークショップ「小規模民族集団の文化とアイデンティティ-地域の営みと国家行政-」(北海道平取町立二風谷アイヌ文化博物館において平成18年3月21日)
・公開国際研究フォーラム「小規模民族集団の現状と課題-東アジアにおける多様な文化の共生-」(本館において平成18年3月24~25日)
・西洋子(東洋英和女学院大学教授・国立民族学博物館機関研究参加者)
2006 「未来へひらくミュージアム―ミュージアムは『聲の森』」月刊みんぱく2月号:10-13。
2006 「未来へひらくミュージアム―ミュージアムは『聲の森』」月刊みんぱく2月号:10-13。
2004年度成果
研究実施状況
9月18日に研究会を開催し、本研究の実施計画について話し合うとともに、機関研究領域「社会と文化の多元性」の宇田川班と連携し、研究会に参加した。10月以降は共同研究「多元的共生空間の創成に関する研究」を発足させ、2回の研究会を開催し、個別研究の報告(12月11日:横山廣子による掛川市のスローライフ運動と市民活動に関する報告/2月14日:西洋子による身体に障害を持つ子どもたちを含むグループ「みんなのダンスフィールド」に関する報告)と討議を実施した。これらの研究に関連して、11月14日に掛川において、2月26日に東京においてワークショップを開催し、本研究班のメンバーと活動参加者との間で質疑応答と意見交換を通じて互いの研究および活動に対する相互理解を深めた。
研究成果概要
研究の初年度に当たり、本研究の目的や基本的概念ならびに各研究参加者の個別研究テーマについて全員で討議をすることを通じて研究を進める上での基礎となる共通理解を得ることができた。掛川と東京において開催したワークショップにおいては、それぞれ本研究メンバー5~6名が活動の実践者との交流を行い、現在の日本社会における多元的共生を実現する上での課題について認識を深めた。東京でのワークショップならびに今年度の各自のテーマ研究をふまえて、来年度に社会還元を目指す公開フォーラムならびに国際ワークショップを開催する計画を作成した。