国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

地域テーマ展示「アメリカ地域の文化:極北のイヌイット・アート」

極北のイヌイット・アート
カナダの極北地域に住むイヌイットは、1950年代から販売を目的とした石製彫刻品や版画・絵画などを制作してきました。彼らが自らの世界を描き出した作品は先住民アートを代表する芸術品として、世界各地で高い評価を受けています。ここでは「自然」、「生業」、「宗教」、「人間関係」の4つのテーマに分けて、イヌイットが制作したアート作品を紹介します。我々とは異なる世界観や表現様式をご観覧下さい。

展示場では、アート作品の展示以外に3つの工夫がなされています。第1は、イヌイットの歌を会場で流しています。これらの歌は、民族音楽学者の谷本一之先生が採集したあやとり歌3種(カナダ北西準州ホルマン)およびドラム・ダンスと歌遊び4種(ヌナヴト準州のアルヴィアト)です。第2は、イヌイット文化に関する質問に答えるイヌイット百科事典です。PCのタッチパネルで質問とその回答を検索することができます。第3は、映像を紹介するフロムワールドです。テーマ展示では、アヴァタク文化研究所のローダ・コキアピク(Rhoda Kokiapik)さんからのメッセージと彼女が選んだ極北の自然や人の写真を放映します。背景に流れている歌は、イヌイット語による賛美歌です。

展示担当/岸上伸啓

展示場のようす
イヌイット・アートには、 石製彫刻版画・絵画タペストリー などがあります。
このテーマ展示では、イヌイットが制作した石製彫刻、版画・絵画、タペストリーを、「しぜん」「とる」「しんじる」「ひとのつながり」の4つのテーマに分けて展示します。→展示作品のリスト


カナダ・イヌイット
西はロシア・チュコトカ半島の沿岸部からアラスカ、カナダをへてグリーンランドに至る広大な極北地域には、約15万人あまりの先住民が住んでいます。彼らはかつて「エスキモー」と呼ばれていました。エスキモーとは、クリー・インディアンやオジブワ・インディアンの言葉で「生肉を食らう輩」を意味しています。それは蔑称であると考えられるため、現在のカナダでは、民族名称として「イヌイット」が使われています。イヌイットとは彼らの言葉で「人々」や「人間」を意味します。現在のカナダには約4万5千人のイヌイットが住んでいます。