国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

みんぱく世界の旅

マレーシア(2) 『毎日小学生新聞』掲載 2016年10月29日刊行
信田敏宏(国立民族学博物館教授)
村に暮らす先住民の1日

ドリアンの季節には村人総出で収穫作業をします

マレーシアの首都クアラルンプールから車で3時間あまり、熱帯雨林が広がる山々を見渡せる小高い丘の上に、先住民オラン・アスリの村があります。

村びとは一昔前までは、サルやイノシシを吹き矢ややりで捕まえたり、野草や果物を採集したりする狩猟採集生活をしていました。現在では狩猟採取だけでなく、ゴムやアブラヤシの木を栽培する人が多くなり、町に出て工場で働いたり、公務員になったりする人も出てきています。

 

昼食の一場面

村びとの1日を簡単に紹介しましょう。夜が明けると、クッキーと甘いミルクティーなどの簡単な朝食をとり、少しでも涼しい時間に農作業に出かけます。バイクに乗って農園へ向かう夫婦や、森に入って、狩猟をする男性たち。午前11時くらいになると作業を終えた人たちが帰ってきます。
ご飯とおかずの昼食の後は、水浴びや昼寝で、のんびりと過ごします。日中は35度を超えるほどの暑さとなり、エアコンなどない環境ではとにかく休むしかありません。午後4時ごろ、少し日が傾き始めると、家々から村びとが出てきます。おしゃべりを楽しむ女性もいれば、バイクで町に買い物に行く男性もいます。ボールやコマ回しで遊ぶ子どもたちの声も聞こえます。


子どもたちが通う小学校

暗くなると、家に帰り、ゴザを敷いて輪になって家族みんなで夕食をとります。テレビを見たり、おしゃべりをしたり、時間がゆったりと流れていきます。夜、漆黒の闇となる村のなかには、さわがしいくらい虫の声が響き渡っています。

 

一口メモ

オラン・アスリは18の民族に分かれ、人口は約20万人。宗教は大半が精霊信仰(すべてに精霊が宿ると信じること)です。

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