旅・いろいろ地球人
暖をとる
- (6)熱帯の夜は涼しい 2010年1月20日刊行
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信田敏宏(研究戦略センター准教授)
儀礼の場での正装は長袖熱帯の国、マレーシアの夜。それは熱帯夜ではなく意外に涼しいものである。私が調査をしている先住民オラン・アスリの村も、昼は40度近い暑さだが、夜は標高が高いせいもあり、急激に気温が下がり、寒いくらいの時もある。
下宿先のおばさんは、最近夜になると、電気ポットでお湯を沸かしてぬるま湯を作り、水浴びならぬお湯浴びをしている。
また、調査助手をつとめる男性は、人一倍寒がりで、私が夜の調査に出歩くとき、いつも革のジャンパーやセーターを着てくる。バンド演奏が趣味の彼は、テレビのロックミュージシャンを見て服装をまねしているようだ。
そんな村びとたちはよく私に「雪」について尋ねる。雪とはどんなものか?日本では雪は降るのか?どれくらい寒いものなのか?私はいささかオーバーに日本の冬の寒さや雪の美しさについて話す。彼らはとても興味津々に聞き入ってくれる。熱帯に暮らす彼らは、寒い地域での暮らしや雪が降る情景に対してある種のあこがれを抱いているようである。とはいえ、本当に雪が降るくらい寒くなれば、きっと熱帯の方が良いと思うにちがいない。シリーズの他のコラムを読む
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