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映画
- (6)多元化する情報発信 2013年9月26日刊行
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南真木人(国立民族学博物館准教授)
IFAによる脚本制作の講習=カトマンズで、筆者撮影第7回ネパール国際先住民映画祭が、今年も首都カトマンズで開かれた。世界22ヵ国49本の先住民にまつわる映画が上映された。主催は、2006年に同市で設立された先住民映画アーカイブ略してIFA(アイファ)。先住民の文化や知識、技術を、映像を通じて記録・保存し、その発展と継承を支援する団体だ。アイファは、他にも、映像制作を志すネパールの先住民の人にさまざまな学術的、技術的ワークショップを提供する。映画監督や人類学者が講師をつとめ、そこから生まれた小作品の上映会も盛んだ。
ネパールは、国が認定している集団だけでも59の民族からなる。王制を廃止し共和国への道を歩むこの国において、民族の権利や自決の議論が高じるのは必然だった。自らの文化を自らの手で、できれば母語で表現したいという欲求が、先住民自身によるネパール語以外の言語を用いた映画の増加に結びついている。
デジタル映像技術の進歩と機器の廉価化は映像制作を大衆化し、作品の発信を容易にした。資金やコネに乏しい民族出身の人でも映像による表現活動ができるようになった。そもそもネパールでこうした国際映画祭が開けるのも、大がかりな設備が要らないデジタル時代の賜物(たまもの)だ。情報や知識の発信地はどんどん多元化している。
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