民族学者の仕事場:Vol.1 佐藤浩司―住まいの原型
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佐藤 私は建築史を勉強していたんですが、建築学の歴史の中で、じつは民家に対する関心はそれほど古いものではありません。建築史というと、だいたい社寺とか重要文化財になるような建物、民家でもかなり大きな住宅がおもな研究対象でした。ふつうの民家を対象にするようになったのはずいぶん後のことだったんですよね。
それに日本の民家は、私が建築史の勉強をはじめたときにはほとんど全国の調査が終わっていた。重要なものは文化財に指定されたり、修復されたりしていて、地域社会が民家を支えているような状況ではなかったんです。そこで、ある社会が自律的に存続していく時に、その社会がつちかってきた民家が現に生きているような場所はどこかにないかと思った。研究者の幻想かもしれないけれど、そういう社会を求めて海外に出かけたんです。
それに日本の民家は、私が建築史の勉強をはじめたときにはほとんど全国の調査が終わっていた。重要なものは文化財に指定されたり、修復されたりしていて、地域社会が民家を支えているような状況ではなかったんです。そこで、ある社会が自律的に存続していく時に、その社会がつちかってきた民家が現に生きているような場所はどこかにないかと思った。研究者の幻想かもしれないけれど、そういう社会を求めて海外に出かけたんです。