民族学者の仕事場:Vol.1 佐藤浩司―屋根裏の空間
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佐藤 中国はまだ行ったことがありません。実際に調査したのは東南アジアの大陸部まで。南中国は歴史的に東南アジアと関係がふかいので、歴史史料には注目しています。建築構造にはいくつかのタイプがあるんですよ。それを考えてゆくと、日本から南中国や東南アジアまですべての建築について、系統をたてることができる。東南アジアの高床というのは基本的に穀物倉から発展したものであるということがよくわかります。




※写真 インドネシア・スンバ島 家屋の外観と内部 1987





※写真左 レリーフに描かれた穀倉 ボロドゥール 1991 / 写真右 インドネシア/スラウェシ島 トラジャ 1991
佐藤 歴史史料がないからあまり古いことはわからないんですけど、例えば、ボロブドゥールのような石造の遺跡にはレリーフが彫られていますよね。レリーフには当時の生活状況が反映されているので、ボロブドゥールは8、9世紀に建造されたものですけど、レリーフのなかに高床の穀倉が出てきたりするんですよ。その穀倉の建築構造は、現在のトラジャの建築構造に似ているとか。あるいはトラジャの船のような屋根の形は、紀元前数世紀のドンソン文化(東南アジアの青銅器文化)の銅鼓に描かれた絵にそっくりだとか。だから、船型屋根の形態は紀元前後からあったんだろうとか、そのくらいの話はできます。
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- 【目次】 dd> イントロ|住まいの調査手法|住まいの原型|フィリピン・ルソン島の民家と日本の古代住居|調査作業|屋根裏の空間|水上生活者バジャウと狩猟採集民プナン|何のための住居|住居に向けられたエネルギー|マイホームの共同研究会|消費財としての住居|巣としての住居|空間と人間関係|ホームレス|住居と記憶|四冊の本|重みを失う空間|