国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

みんぱっく イスラム教とアラブ世界のくらし

 
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制作担当教員・西尾哲夫からのメッセージ

みなさんは、「アラジン」のお話を本で読んだり、ビデオで見たことがあると思います。「アラジン」は、中東世界に伝わるいろいろなお話を集めたアラビアン・ナイトという本に入っています。でも、ちょっと待ってください。実はもともとの「アラジン」の舞台となるのは、中国なのです。アラジンは中国人だったのですね。アラビアン・ナイトを最初にヨーロッパに紹介したのは、三百年ほど昔のフランス人学者でした。この人が訳した「アラジン」には、これは中国の話であるとちゃんと書いてあります。アラビアン・ナイトはヨーロッパで大人気になり、アラジンはいつの間にかアラブ人になってしまいました。日本人が知っているのは、アラブからやって来たアラジンではなく、ヨーロッパからやって来たアラジンなのです。

ヨーロッパからやって来たのは、アラジンだけではありません。日本人が考えているようなアラブ世界のイメージそのものが、実はヨーロッパから入ってきたものである場合が非常に多いのです。わたしたちは、ヨーロッパもしくはアメリカというフィルターを通してアラブ世界を見てきたのですね。

では、ほんとうのアラブ世界とはどんなものなのでしょう。知らない世界を知ることは自分を知ることにもつながります。大切なのは、自分で確かめて自分で考えるということだと思います。新しい世界、新しい文化を学びながら、日本についてももっと深く考えていきたいと思っています。

制作担当教員・菅瀬晶子からのメッセージ

「アラブ」といわれて、みなさんが思い浮かべるのは、おそらく石油と砂漠ではないでしょうか。アラブの人びとの多くが信じているイスラム教についても、「ちょっと怖い」「よくわからない」というイメージを抱く方が、ほとんどではないかと思います。

確かに、アラブは日本から遠い世界です。直行便の飛行機を使っても、関空から10~14時間もかかります。自然環境も、緑豊かな日本に比べると水資源が乏しく、過酷です。そんなところで生きる、アラブの人びとの心の支えとして、イスラム教はうまれました。豚肉を食べられなかったり、お酒を飲めなかったりするため、厳しい宗教と思われがちですが、実はイスラム以前の文化を積極的に取り入れ、ふところの深い面も持っているのです。

また、アラブとひとくちにいっても、東はイラク、西はモロッコまでまたがる広大な地域。かなりの地域差があります。このみんぱっくには、サウジアラビアなどアラビア半島のものに加えて、レバノンとパレスチナを中心とした、東地中海地域のものも入っています。東地中海地域では、石油はほとんどとれません。そのかわり、彼らがおもな産業としているのは農業です。勤勉で努力家、家族の絆を重んじ、本音と建て前を巧みに使い分ける人びとの気質は、日本と似通った部分もあります。違うようで日本と案外似ている、東地中海アラブのくらしを垣間見ていただければ、さいわいです。

みんぱっくに入っているモノたち
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