国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

アンデスの玉手箱―ペルー南高地の祭りと生活

 
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制作担当教員・関雄二からのメッセージ

私がアンデス地帯を研究するきっかけは、先生からの誘いでした。そのときは、正直、インカ帝国やフォルクローレ、それにアンデスの雪山しか頭に思い浮かばず、浮き足だっていました。ところが、初めに出会ったのは全く別世界。乾燥した砂漠に囲まれた近代的なビル街に流れる音楽は、ワルツやサルサ。じつは、これは海岸都市に住む混血(メスティソ)の世界であり、南の山奥を訪れると、ケーナを奏で、華やかな衣装に身をまとったイメージ通りの人々にも出会えました。でも、アンデスと一口に言ってもなぜ、これほど多様なのでしょうか。

それは、この地にはインカ帝国に代表される古代アンデス文明が栄え、しかもそれが16世紀にスペイン人による征服を受け滅亡してしまったという歴史があるからです。以来アンデスは、300年という長い植民地時代も経験しました。その過程で、従来使用されていた言葉や習慣、そして道具等が消え、ヨーロッパ起源のモノや考え方が入ってきたというわけです。このことはパックの端々にうかがわれます。

でも確かにこの多様性や歴史の厚みはおもしろいのですが、私がアンデスを愛してやまない本当の理由は、そこで出会う人々がすばらしいからです。忙しく、あわただしい中で、他人への興味や配慮が失われつつある現代日本社会と比べると、なんというか人間関係がとても濃いんですね。こちらが忘れているような自分のこと、家族のことなど、以前に語り合ったさまざまな話題を忘れずにいてくれるのですから。

昨今よく言われる「共生」ということを仮に自然にばかりでなく、人間にあてはめたとき、まさに身をもって体現しているのが彼らのような気がします。私たちとはちがうけれども、私たち以上に同じ場所と時間を共有することができる人々なのです。その意味でも、アンデスの人々の世界を他の世界に向けて発信していく義務があると、私は考えています。

みんぱっくに入っているモノたち
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