国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

樫永真佐夫『ハノイの異邦人』 ─ 5.隣人や同居人

樫永真佐夫『ハノイの異邦人』

5.隣人や同居人
 ハノイは高温多湿で、当然ながら動植物が繁殖しやすいところです。最近小鳥をパチンコで撃って食べたりするのは、田舎の人だけになってきました。ここ数年、小鳥を飼うのがブームで、山地で密猟された小鳥がハノイなんかで売られていましたが、飽きられて放された鳥が数少ない緑に集まってきます。ぼくの部屋のまわりは木が多いのでよく鳥が遊びに来ています。小さい虫はいっぱいわいてくるので、食べ物には困らないのでしょう。
 ここの敷地にヒキガエルが多いのもそのためでしょうね。カラスやヘビがいればヒキガエルは繁殖できませんが、そんな大型の生物はハノイではとっくの昔に食べられてしまっていて、ヒキガエルには天敵がいません。またヒキガエルは人間の食用にはなりません。だから毎日、街頭の下にたくさんヒキガエルが集まって、エサが落ちてくるのをのんびり、ぶらぶら待っています。自転車やバイクで危うく轢き殺しそうになるのもしばしばです。
 ぼくの部屋のまわりにはヤモリがいます。部屋の中にもいて、朝になってみると、ところどころにウンコをくっつけています。日本のヤモリと違って、東南アジアのヤモリは鳴くのです。ときどき部屋のどっかでヤモリが、キュッ、キュッ、キュッ、と鳴いています。ヤモリやカエルはダニや蚊も食べてくれますし、それくらいの自己主張にはぼくは寛容です。
 
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[2002年6月]
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